詐欺師はラブブのコレクション玩具の爆発的な人気を悪用し、偽のウェブサイトやソーシャル メディア広告を通じ、消費者に模造品の「ラフフ」人形を数百ドルで買わせたり、商品をまったく送らなかったりします。ここでは、被害に遭わないようにする対策をご紹介しましょう。
サイバー犯罪者の目を引くバズり現象
ラブブ人形について聞くのは初めてかもしれませんが、なぜ一大ブームとなり、同時にサイバーセキュリティの悪夢となっているか、すぐにおわかりいただけるのではないでしょうか。独特の鋭い歯をもち、いたずらっぽい表情できどったミニチュアのぬいぐるみは、リアーナ、デュア・リパ、BLACKPINK のリサなどのセレブによる支持や、TikTok での開封動画のバズりをきっかけに人気が爆発しました。
香港のアーティスト、カシン・ロンが制作し、2019年からポップマートが独占販売している 20 ~ 30 ドルの「ブラインド ボックス」コレクションは、需要が過熱しレアな「シークレット」版などは数千ドルで転売されるほどです。ファンは正規のラブブを手に入れるためにポップマートの店舗で何時間も行列に並び、海外にまで足を運んでいます。爆発的な拡散の需要と供給不足があると、サイバー犯罪者は必ず群がってきます。
最新の詐欺手口の実態
問題の規模
米商業改善協会 (Better Business Bureau、BBB) には、正規のラブブ人形を購入したつもりが「ラフフ」と呼ばれる模造品をつかまされた、さらに悪いことに商品自体が届かなかったという消費者からの報告が76件も寄せられています。被害者の中には、一回の詐欺取引で 500 ドルを失ったと報告する人さえいます。https://youtu.be/TSE1Z6thMqM?si=Gefx96-w-CmBtMg0
詐欺のしくみ
攻撃の手口は不気味なほどありふれているのに、驚くほど効果的です。
1. ソーシャル メディアへの侵入: 詐欺師は TikTok や Instagram に「限定版」のラブブ人形を割引価格で宣伝するスポンサー広告を大量に掲載します。
2. 偽サイトの作成: ポップマートの公式ブランドを真似たプロが制作したかのような EC サイトを立ち上げ、「在庫僅少」などの急かす文言やカウントダウン タイマーを用います。
3. 支払い情報の搾取: 被害者が支払い情報を入力すると、詐欺師は粗悪な模造品を発送するか、完全に姿をくらまします
4. Web 上で雲隠れ: 苦情が相次ぐと、詐欺の一味は一夜にしてすべてを消し去り、別のドメイン名で再び姿を表します。
最も危険なプラットフォーム
米商業改善協会 (BBB) は特に次のような詐欺行為に注意を呼びかけています。
- Kawaii Room (カワイイ ルーム)
- 23Cult Neo (23 カルト ネオ)
- Bubulands (ブブランズ)
- Bears R Us (ベアーズ アー アス)
- Labubu Fantasy (ラブブ ファンタジー)
また、「POP MART USA」を名乗る TikTok のライブ配信が特に問題となっており、強引な販売手口や偽のカウントダウン タイマーを使い視聴者をすぐさま購入するようにと急かします。
注意すべき警告サイン
Web サイトでの注意点
- 正規価格 (ラブブ正規品は 20 〜 30 ドル) を大幅に下回る価格設定
- 正規ブランド名をわずかに書き間違ったドメイン名
- 確認できる問い合わせ先やお客様対応窓口が存在しない
- 公式のポップマート ブランドやライセンスの情報が記載されていない
- 会社情報が適切に記されていない形式的な注文確認メール
TikTok や Instagram の「限定セール」をうたうスポンサー広告
こうした詐欺広告は正規の広告に見えるように作られており、多くの場合ポップマート公式チャンネルから盗用したプロ品質の製品写真が使われています。広告ではよく「限定版ラブブが 50% オフ」などと現実的ではない割引や、真実であるには出来すぎなお得感をうたっています。宣伝文句としては「あと 24 時間!」「あと 100 個!」など、あたかも急ぐ必要があるかのように装い、消費者に十分な検討をせずすぐに購入するようにけしかけます。
注意すべきサインとしては、popmart.com やポップマート公式 Amazon ストア以外のドメインにリンクがリダイレクトされるケースがあり、この場合は詐欺を表しています。このような広告は、ごく一般的な名前のアカウントや、投稿履歴がほぼ存在しない新規作成されたプロフィールから発信されているのが典型的な手口であり、詐欺を目的に設置されたことを示唆しています。コメント欄は入力できないようになっているか、あきらかに偽の好意的なレビューで埋め尽くされてられており、満足した顧客がいるかのような錯覚を生み出します。
詐欺師はよく「ラブブ」の非公式の呼び名や意図的な書き間違いを使い、時には「ラフフ」のような変化型をあえて用います。これは公式ブランド名に関するプラットフォーム側の不正検出アルゴリズムをすり抜けるためです。
カウントダウンで急かし希少品と見せかけるライブ配信
TikTok のライブ配信は、ラブブ詐欺のなかでは特に危険な手口で、巧妙な心理操作戦をしかけてきます。このような配信は、「POP MART USA」を名乗り、毎日最大 12 時間にわたって行われ、カウントダウン タイマーを何度もリセットして、急ぐ必要があるかのように演出します。配信者が実際は存在しない「再入荷」や「新しく入荷しました」などをうたい、商品が「販売開始」された瞬間に数秒で購入させ、視聴者に十分に検討する余地を与えません。
このような操作はチャット機能にまで及び、ボットアカウントが偽のコメントを書き込み熱狂を装うのです。配信中に表示される QR コードも本物のように見えますが、実際には不正なサイトへと誘導されてしまいます。多くの配信者は、ポップマートのグッズを身につけたり正規品を並べたりして模造品を販売し、「公式ポップマート再入荷イベント」のように公式らしい表現を配信タイトルに用いて信憑性を高めています。
公式の小売販売会社を名乗る類似アカウント
詐欺師は信憑性を高めてより広い視聴者に届けられるように、相互につながる偽アカウントのネットワークを作ります。このプロフィールには「POP MART USA」や「公式ラブブストア」などの名前の変形バージョンを使い、自己紹介欄にはポップマート公式の文言や問い合わせ先を複製して用います。プロフィール画像には、無断で ポップマート のロゴや公式の製品写真を使い、偽アカウント同士で相互に宣伝し合うことで正規品らしさを演出します。
こうした詐欺アカウントは、ボットのネットワークを通じて不自然に膨らませたフォロワー数を維持し、投稿履歴もごく最近のものか、公式アカウントから盗用したコンテンツが大半を占めています。投稿パターンには一貫性がなく、自動プログラムや外部委託による運営がうかがえ、コメントやエンゲージメントも自然発生ではなく組織的に運営されたもののように見えます。
QR コードとでっちあげの「本物らしさの証明」
「証明」は一見本物のように見えますが、実は消費者をだますために作られたニセモノなのです。QR コードはポップマートの公式システムではなく偽の認証サイトへと誘導し、証明書やスタンプも公式に似せてはいるものの同じではありません。詐欺師は正規のラブブ製品の写真を使って正規品であることを「証明」しますが、実際には模造品を発送し、ポップマートの実際の番号システムと一致しないシリアル番号やロット番号を提示します。
この欺瞞には、正規の検証方式を備えていないホログラムシールやセキュリティ機能、詐欺師が作った偽アプリの「認証アプリ」画面、実際にはポップマート製品を認証していない第三者サービスを使った認証への言及なども含まれます。表示では正規のパッケージを見せておきながら、実際に発送される商品はごく形式的な箱や模造品の箱に入っています。
支払いで注意すべき警告サイン
詐欺のしかけを示す兆候がいくつかあります。詐欺ではよく CashApp や Venmo といった個人間送金アプリでの支払いを要求し、安全な支払いのメソッドや SSL 認証を導入せず、注文直後のキャンセルはできないようにしています。支払い完了後はカスタマーサービスが通常応答しなくなり、消費者には打つ手がなくなります。
本物と偽物のラブブを見分ける方法
本物のラブブの特徴
正規品のラブブ人形には、正規品を判定できる決め手として、ちょうど 9 本のとがった歯があります。肌は淡いピーチ色で一体の色を保ち、片足の裏にはポップマートの公式ロゴが刻印されています。正規品は正しいパッケージに収められており、正規の QR コードやホログラムシールが付属し、 ポップマートの公式システムで確認できる正規認証スタンプもついています。
偽物「ラフフ」の注意すべき警告サイン
模造品には、不正に製造されたことを示す痕跡が見られます。こうした偽物は歯が 9 本より多い、または少ない、顔の色や表情が異なる、ポップマートのブランド表示が欠けている、または偽物が使われているといった点があげられます。素材や造りの品質が明らかに劣っており、パッケージには公式の認証システムに接続して認証ができるQRコードがついていません。
サイバーセキュリティ対策の実行プラン
こうした詐欺から身を守るには、何重にも対策が必要です。まず購入には、公式の販売チャネルのみを利用しましょう。popmart.comのポップマート公式サイトか、認証済みの Amazon 公式ストアで購入して、確実に本物を手に入れましょう。聞きなじみのない小売会社から購入する前には、必ず「[Web サイト名]+ 詐欺」で検索し正規品か確認しましょう。
不正防止や返金請求が可能な安全な支払い方法、特に個人間送金アプリではなくクレジットカードを利用しましょう。ソーシャル メディア広告には常に強い警戒心を持ち、とりわけ急かしたりすぐに購入することを迫ったりする広告には十分注意してください。
詐欺の被害に遭った場合
もし詐欺に遭ったことに気づいたら、すぐにスクリーンショット、メール、取引記録を保存するなどして、証拠を残すようにしてください。直ちにクレジットカード会社や銀行に連絡して支払いに意義を申し立て、米商業改善協会の詐欺追跡ツール (Scam Tracker)に被害を報告しましょう。さらに、連邦取引委員会 (FTC) に苦情を提出し、当局がこうした犯罪行為を追跡できるよう協力しましょう。
金銭的な救済措置
クレジットカード会社を通じてチャージバックを申請し、商品が偽物であったことを示すすべての証拠書類を提出してください。今後の購入では個人間送金アプリを使わないようにしましょう。こうしたアプリは不正利用の保護対策が限られており、詐欺に遭った場合の返金や救済手段も少ないためです。
サイバーセキュリティに突きつけられた大きな課題
ラブブ詐欺はサイバー犯罪者の手口が著しく進化を遂げていることを示す憂慮すべき事例であり、犯罪者が口コミのトレンドを瞬時に悪用して巧妙な詐欺ネットワークを作り出せることを浮き彫りにしています。このような手口は「FOMO (希少品を逃す恐れ)」や希少性の演出といった消費者心理を突き、被害者を急かし金銭的な判断を迫ります。
さまざまな要因により、この問題は消費者、サイバーセキュリティ専門家の双方にとって危険なものとなっています。詐欺師はトレンドが生まれてから数日のうちにすばやく対応し巧妙なしくみを作り上げることができ、ソーシャルメディアでの拡散により、プラットフォーム側は不正なスポンサー広告をすぐに特定して削除するのが難しくなっています。多くの詐欺が国際展開しているため、各法執行機関の連携も厳しくなってきています。また、初期のトレンドに飛びつきやすい一方で巧妙な詐欺に対する経験が乏しいZ世代の消費者層が、多くの場合標的となります。
業界の対応と今後の見通し
ポップマートは模造品対策に取り組んでいますが、そもそもオンライン詐欺は分散する性質があるため、依然として対応は困難なままです。ソーシャルメディア各社は広告の認証プロセスを改善しつつありますが、詐欺師はそれでもシステムの脆弱性を突く回避策を目ざとく見つけてしまいます。
国際的な税関当局もラブブ人形の模造品の出荷を押収し、最近の摘発では数十万点規模の偽物が差し押さえられました。それでもこうした詐欺は今もなお高い利益率を誇り、新たな詐欺組織が立ち上がり、検知を免れるために手口を進化させつづけています。
次世代の消費者を守るために
サイバーセキュリティ専門家や情報を持つ消費者として、私たちには進化しつづける脅威について周りの人たちに伝えつづける責任があります。サイバー犯罪者がバズるブーム現象を悪用する例は、ラブブ詐欺が最後ではありません。これは消費者心理や一大ブーム現象を狙った、ますます巧妙化する最新の手口に過ぎないのです。
消費者を守るには、普段からの警戒し教育を怠らないことが大切です。支払い情報を入力する前に必ず販売者が本物であるか確認し、うますぎる話には常に疑いを持ち、不正防止や返金請求が可能な支払い方法を利用してください。疑わしい詐欺を見かけた場合は関係当局に報告し、同じような被害から他の消費者を守る手助けをしましょう。
爆発的な拡散のカルチャーとサイバー犯罪が交差する場所は、デジタル トレンドの加速と犯罪手口の巧妙化に伴い、ますます複雑になっていくでしょう。このような手口について情報を入手しつづけ、コミュニティで共有することで、詐欺の成功率を下げ、消費者を金銭的被害から守ることができます。
拡散のトレンドやオンライン ショッピングに関して言えば、健全な懐疑心はシニシズムではなく、サイバーセキュリティのごく基本的な心がまえです。正規品かを確認するコストは、被害を受けるコストより常に小さいのです。